東京・サステナブル・ファイナンス・フォーラム東京都主催

東京都では金融による社会的課題の解決に貢献していくため、サステナブルファイナンス推進に向けた多様な取組を積極的に行ってきました。これまでの活動を発展させ、持続可能な都市づくりに貢献する金融サービスの普及促進への寄与及びサステナブルファイナンス分野における東京都のプレゼンス向上を目指し、この度2021年2月8日より東京・サステナブル・ファイナンス・ウィークを開催しました。

東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク期間中には、国内外の公的機関、金融機関、金融業界団体等関係者を対象としてサステナブルファイナンスの幅広い可能性を官民で検討する「東京・サステナブル・ファイナンス・フォーラム」を開催しました。フォーラムでは、昨今国内外で急速に拡大しているサステナブルファイナンスについて、有識者とのディスカッションを通し、最新グローバル動向の共有に加え、日本におけるサステナブルファイナンス市場の課題や東京都ならではの強みを活かしたサステナブルファイナンスの幅広い可能性を官民で検討しました。プログラムは2部構成となっており、前半の基調講演で様々な視点からみたサステナブルファイナンスの動向について触れた後、後半のパネルディスカッションにてサステナブルファイナンスの多様化と可能性等についてポストコロナ時代の視点も含めながらディスカッションを実施致しました。

開催概要

  • 日 時2021年2月9日(火)13:30~17:30
  • 主 催東京都戦略政策情報推進本部
  • 対 象本フォーラムは、公的機関、金融機関、金融業界団体等の関係者(事業者等においてESG推進部門、経営企画部門等に所属される方を含む)を対象としています。
  • 開催形式オンライン配信
  • 定員数制限はありません
  • 参加費無料

東京・サステナブル・ファイナンス・フォーラム プログラム

時間 項目 登壇者
13:30~13:45
(15分)
開会挨拶・講演開会挨拶・講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
『国際金融都市・東京』構想及びサステナブルファイナンスに関する都の取組について
寺﨑 久明
東京都戦略政策情報推進本部長
13:45~14:15
(30分)
基調講演①基調講演① | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
サステナブルファイナンスを巡るグローバルな潮流
末吉 竹二郎
国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)特別顧問
14:15~14:45
(30分)
基調講演②基調講演② | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
日本におけるサステナブルファイナンスの発展の系譜
河口 真理子
立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任教授 兼
不二製油グループ本社株式会社CEO補佐
14:45~15:15
(30分)
基調講演③基調講演③ | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
投資家の視点からみる国内外のサステナブルファイナンスの動向
岩永 泰典
アムンディ・ジャパン株式会社 チーフ・レスポンシブル・インベストメント・オフィサー(CRIO)
15:15-15:35
(20分)
コーヒーブレーク
15:35-17:30
(115分)
パネルディスカッション
サステナブルファイナンスの多様化と可能性等についてディスカッション

前半の部 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
後半の部 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
パネリスト
レオ・ヴァン・ステイン
アイエヌジーバンクエヌ・ヴィ東京支店/
在日代表、マネージング・ディレクター

池田 賢志
金融庁/チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー

入山 章栄
早稲田大学大学院経営管理研究科 早稲田大学
ビジネススクール/教授

竹ケ原 啓介
株式会社日本政策投資銀行/執行役員
産業調査本部副本部長 兼
経営企画部サステナビリティ経営室長

松尾 琢己
株式会社日本取引所グループ/総合企画部 企画統括役

武藤 知樹
株式会社三菱UFJ銀行
ソリューション本部 ソリューションプロダクツ部部長
(ストラクチャードファイナンス担当)

ファシリテーター
磯貝 友紀
PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス/テクニカル・リード
PwCあらた有限責任監査法人 サステナビリティサービス/パートナー
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基調講演(ご登壇順)

  • 末吉 竹二郎 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)/特別顧問

    末吉 竹二郎

    1967年東京大学経済学部卒業後、三菱銀行入行。1989年より米州本部に勤務。ニューヨーク支店長、取締役、東京三菱銀行信託会社(ニューヨーク)頭取を経て、1998年6月、日興アセットマネジメント副社長。日興アセット時代にUNEP FIの運営委員会のメンバーに就任。国連環境計画(UNEP)・金融イニシアティブ(FI) 特別アドバイザー「金融と地球環境」に関する数々の国際会議に参加。WWFジャパン会長、自然エネルギー財団副理事長。「責任投資原則」の普及指導・日本企業にCSR (企業の社会的責任)推進を促す。

  • 河口 真理子 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任教授 兼 不二製油グループ本社株式会社CEO補佐

    河口 真理子

    1986年一橋大学大学院修士課程修了(環境経済)、同年大和証券入社。1994年に大和総研に転籍、企業調査などを経て現在、立教大学特任教授、不二製油グループ本社株式会社CEO補佐、株式会社大和総研特別アドバイザー(2020年4月より)。 2020年3月まで大和総研にてサステナビリティの諸課題について、企業の立場(CSR)、投資家の立場(ESG投資)、生活者の立場(エシカル消費)の分野で20年以上調査研究、提言活動を行なってきた。現職ではサステナビリティの教育と、エシカル消費、食品会社のエシカル経営に携わる。

  • 岩永 泰典 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    アムンディ・ジャパン株式会社 日本支社/チーフ・レスポンシブル・インベストメント・オフィサー(CRIO)

    岩永 泰典

    2014年にアムンディ・ジャパンに入社。1988年日本債券信用銀行に入行後、1997年運用業界に入り、バークレイズ・グローバル・インベスターズを経て、ブラックロック・ジャパンではグローバル・資産戦略運用部長、取締役CIOを歴任。アムンディ・ジャパンでは、入社来CIO兼運用本部長を務め、2020年7月より責任投資およびスチュワードシップ活動を統括するチーフ・レスポンシブル・インベストメント・オフィサーに就任。ペンシルべニア大学ウォートン・スクールにてMBA、EDHECリスク・インスティチュートよりPhDを取得。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会認定アナリスト。日本経済新聞出版社から共著「ESG入門」。2018年経済産業省TCFD研究会委員。2020年TCFDコンソーシアム企画委員。

パネリスト(五十音順)

  • レオ・ヴァン・ステイン | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    アイエヌジーバンクエヌ・ヴィ東京支店/在日代表
    マネージング・ディレクター

    レオ・ヴァン・ステイン

    2018年より現職。日本におけるホールセールバンキング事業を統括。1984年の入社以来、リテール・ホールセール両領域における業務を幅広く経験。オランダに続きアメリカ地域の信用リスク管理責任者を務めた後、2004年にグローバルホールセールバンキング・信用リスク管理責任者に就任。 2007年から2018年まで再生可能エネルギー、公益事業、電力事業の仕組み金融におけるグローバル責任者を歴任。オランダニエンローデビジネス大学学士・修士課程修了。

  • 池田 賢志 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    金融庁/チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー

    池田 賢志

    2019年3月、金融庁に「チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー」の ポストが新設されたことに伴い同職に就任。同職においては、気候変動 関連の財務情報開示に係るTCFD提言の日本における実施を担当すると 同時に、金融庁内のSDGs取組戦略プロジェクトチームの事務局を務め るなど、サステナブルファイナンスに関する職務を幅広く所掌。

  • 入山 章栄 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    早稲田大学大学院経営管理研究科
    早稲田大学ビジネススクール/教授

    入山 章栄

    慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で、主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。 2013年より早稲田大学大学院、早稲田大学ビジネススクール准教授。 2019年より現職。 「Strategic Management Journal」「Journal of International Business Studies」など国際的な主要経営学術誌に論文を多数発表。

  • 竹ケ原 啓介 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    株式会社日本政策投資銀行/執行役員
    産業調査本部副本部長
    兼 経営企画部サステナビリティ経営室長

    竹ケ原 啓介

    1989年一橋大学法学部卒業、同年日本開発銀行(現 (株)日本政策投資銀行)入行。フランクフルト首席駐在員、環境・CSR部長等を経て2017年よりサステナビリティ経営室長を兼務として現職。DBJ環境格付融資の創設など環境金融分野の企画に長らく従事。現在、同行の産業調査活動を統括。企業のCSRレポート第三者意見執筆やESG、SDGsに関する講演等。

  • 松尾 琢己 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    株式会社日本取引所グループ/総合企画部 企画統括役

    松尾 琢己

    1992年早稲田大学法学部卒業、2002年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。1992年東京証券取引所(当時)入所後、株式部、債券部(国債先物・オプション取引市場の制度企画担当)、大蔵省証券局出向、派生商品部、証券保管振替機構(一般振替DVPの清算機関制度企画担当)上場部(ETF、排出量取引市場創設担当)、経営企画部等を経て、2016年から現職。2018年サステナビリティ推進本部設立時から担当。

  • 武藤 知樹 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    株式会社三菱UFJ銀行
    ソリューション本部 ソリューションプロダクツ部 部長(ストラクチャードファイナンス担当)

    武藤 知樹

    ストラクチャードファイナンス(SF)業務のグローバル・ヘッドとして、サステナブルビジネス、プロジェクトファイナンス(PF)、航空機・船舶ファイナンス、ECAトレードファイナンス等を統括。1993年に東京銀行(現三菱UFJ銀行)に入行。1997年以来、20年以上に亘り、SF・PF関連業務に従事。2002年から2005年にかけて、在米国ワシントンDCの米州開発銀行に出向、2011年から2015年には在シドニーの豪州SF室に在籍した。2017年~2019年にかけて、在東京のPF室長を務め、その後SF担当部長に就任、現在に至る。

ファシリテーター

  • 磯貝 友紀 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス/テクニカル・リード
    PwCあらた有限責任監査法人 サステナビリティサービス/パートナー

    磯貝 友紀

    2003年より、世界銀行をはじめとした公的機関において民間セクター開発専門家として勤務した経験を有する。2011年より現職。日本企業のサステナビリティビジョン・戦略策定、サステナビリティリスク管理の仕組み構築、途上国の社会課題解決型ビジネス支援やサステナブル投融資支援を実施。東京大学文学部卒、東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了。

東京・サステナブル・ファイナンス・フォーラム開催報告

開会挨拶/講演

東京都戦略政策情報推進本部長 寺﨑 久明

  • 東京都は2017年に策定した「国際金融都市・東京」構想のもと、魅力的なビジネス面や生活面の環境整備、東京市場に参加するプレーヤーの育成とともに、金融による社会的課題解決への貢献に重点的に取り組んでおり、さまざまな施策を展開していることを紹介しました。また、直近の国際金融センターランキングでは世界第4位、アジアでは第2位の地位を獲得したことを発表しました。
  • 国際金融都市としての東京都の地位を確固たるものとすると同時に、新型コロナウィルスや気候変動等さまざまな外部環境の変化に対応するためにも、サステナブルファイナンスの重要性がより高まっており、本フォーラムを通じてサステナブルファイナンスに関する議論を深め、持続可能な未来の実現につなげていくことを表明しました。
  • 東京都の具体的な取り組みとして、国内自治体初の東京グリーンボンドの発行や東京版ESGファンドの運営、FC4Sへの加盟等が紹介され、今後も国や民間企業と連携しながら、サステナブルリカバリ―の視点も重視しながら多面的な取り組みを積極的に推進し、「国際金融都市・東京」の地位の確立を目指す意思を表明しました。

基調講演①

サステナブルファイナンスを巡るグローバル動向

国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)特別顧問 末吉 竹二郎 氏

  • UNEP FIの末吉特別顧問は、まずはじめに、21世紀の地球をうまく経営していくための原点は人類と自然との平和共存であることを主張しました。続いて、UNEPFIの取組を中心としたサステナブルファイナンスのこれまでの歴史や、最近の世界的潮流であるネットゼロ、新しい動きとしてTNFDの動向、TCFDの義務化、IIRCとSASBの統合等が紹介され、このような潮流が金融機関や事業会社に及ぼす影響について、事例を用いて解説しました。
  • このような大きな潮流のなかで資本主義の本質が問い直されていると指摘し、社会と経済の大改革が必要になってきていると述べました。また、CEOの役割に関する最近の議論を紹介し、CEOのマインドセットが、シェアホルダー資本主義からステークホルダー資本主義へと大きく変遷してきていると述べました。
  • 最後に、日本の金融の存在意義、在り方について、これまでの経済第一主義から、環境と経済の新しい秩序を作っていく必要性を訴えました。ネットゼロが象徴するこの潮流により、日本においても、戦後最大の社会改革が始まっていくと指摘し、社会の基本的インフラストラクチャーである日本の金融が果たすべき役割について、金融当事者はもちろんビジネスあるいは社会全体も同時に日本の金融の在り方を考えるときが来たのではないかと問いかけました。

基調講演②

日本におけるサステナブル投資の発展の系譜~SRIからESG投資へ~

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任教授兼不二製油グループ本社株式会社CEO補佐 河口 真理子 氏

  • 河口教授は、日本におけるサステナブル投資の発展を「黎明期:社会的責任投資(SRI))、「定着・準備期間:社会的責任からESG(サステナビリティ)へ転換」、「離陸期:SDGsとESGサステナビリティと経済の融合へ」との3つのフェーズに分けて、各段階における詳細な歴史を、時代背景も交えながら紹介しました。
  • 2015年にようやく離陸したといえる日本のサステナブルファイナンスの市場は急激に拡大しており、今後は日本の伝統的価値観と最新の金融テクノロジーを融合し、グローバル及びローカルな社会課題解決のためのファイナンスとして、世界のリーダーになることを期待すると述べました。

    【日本のサステナブルファイナンス発展の3フェーズ】
    1990年代~2005年黎明期・SRIの誕生
    2005年~2015年定着から準備期間SRIからESG(サステナビリティ)への転換
    2015年~離陸SDGsとESG(サステナビリティ)と経済の融合

基調講演③

投資家の視点からみる国内外のサステナブルファイナンス動向

アムンディ・ジャパン株式会社チーフ・レスポンシブル・インベストメント・オフィサー(CRIO) 岩永 泰典 氏

  • 岩永氏は投資家の視点から、欧州及び日本における投資家視点でのサステナブルファイナンスの動向を紹介しました。
  • まずは責任投資、ESG投資について、投資家の意識や投資のアプローチについて解説を行いました。2018年時点で、全世界の責任投資残高3,200兆円の約半分を欧州が占めていることについて、その背景には欧州委員会が策定したアクションプランや、整備された規則と情報開示フレームワーク等の要因があると分析しました。
  • 日本では、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの導入により、ESGを踏まえた企業の活動と投資活動が求められるようになったが、経済的なリターンが確信されてないこととインパクト測定が困難であることが今後のESG投資を推進するにあたっての課題になっていくと指摘しました。
  • 投資家の立場から、ESGインテグレーションを重視したエンゲージメントを行うことは企業価値の向上に貢献できると述べ、エンゲージメントにおいて、経営戦略、ガバナンス、パフォーマンス管理、ディスクロージャーの四視点が不可欠であると言及しました。

パネルディスカッション

パネルディスカッションは「サステナブルファイナンスの多様化と可能性」をめぐり、金融行政、金融機関、アカデミアの異なる観点から①日本のサステナブルファイナンスの特徴と動向、②企業価値とサステナブルファイナンス、③非財務情報/ESG情報、及び④脱炭素時代、with/afterコロナ時代や今後の対応等についての議論が行われました。

オープニング

  • ファシリテーターの磯貝氏が、前半の基調講演の内容も踏まえ、SDGsやパリ協定が既にメインストリーム化してきていること、現在は、ネットゼロに向けた動きが本格化しており、「世界で過去最大級の社会変革をもたらすものである」という末吉氏のご発言も象徴されるように非常に大きな動向であること、また、企業の長期的な価値向上という意味で、企業経営者にとってもにサステナビリティは、今、最重要アジェンダの一つになっていると述べました。
  • また、サステナビリティファイナンスに関する数字として、①パリ協定を達成していくためには、2020年以降、年間1000億ドルの資金が必要であること、②国際エネルギー機関によると、エネルギーセクターの変革を進めるのに、今後、2兆ドルが必要であると試算されていること、また、③SDGsを達成ための資金としては、年間2.5兆ドルが足りないと試算されていることを紹介し、サステナブルファイナンスというのは、大きなニーズとともに、大きなポテンシャルがあるエリアであると指摘しました。

テーマ①日本におけるサステナブルファイナンスの特徴と動向

  • 金融庁チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサーの池田氏が、金融行政の取組概況として、スチュワードシップ・コードを含むコーポレートガバナンス改革を行い、その中にESG・サステナビリティの要素を組み込んできた動向を紹介しました。その意図としては、企業の意思決定のプロセスにさまざまなステークホルダーの多様な意見を取り込んだ上で、イノベーションを推進し、それによって企業価値を高めていくという道筋があることを説明しました。また、企業の環境、社会におけるリスクと機会の評価は企業価値に影響を与えるため、このような企業価値の評価は、資本市場及び今後の日本企業の経済、社会システムの転換の中で非常に重要な意味があると述べました。

  • 続いて株式会社日本政策投資銀行の竹ケ原氏が、日本の金融機関のESG,SDGsへの取組み概況を紹介しました。サステナブルファイナンスは急速に拡大かつアセットクラスを問わず広がっており、①投資の世界でESG投資がメインストリーム化していること、②直接金融においては、ICMAのガイダンス等インフラが整備され信頼性や透明性が整ったことで、社債が急激に拡大。その恩恵として環境不動産等オルタナティブも拡大していること、③間接金融のモニタリング機能は、サステナブルファイナンスの領域で大きな役割を果たすことが期待されると述べました。

  • 続いて、株式会社日本取引所グループの松尾氏が、日本企業のESG情報開示にかかる動向等について紹介しました。ESG情報の開示について、東京証券取引所としては企業の自主的な開示を促しつつ、それのサポートをする姿勢であるとし、具体的な取り組みとして、①「コーポレートガバナンス・コード」において、上場会社がESG情報を含む非財務情報の提供に主体的に取り組み、株主以外のステークホルダーとの適切な協働の中で、社会・環境問題等の課題への対応、それに関する取締役会での検討を勧奨していること、②「ESG開示実践ハンドブック」を作成し、公表し、投資家の視点(マテリアリティ(重要課題)の特定と企業戦略との結び付き等)を盛り込んでいること等を紹介しました。また、ESG情報開示において、企業と投資家の認識のギャップをどのように埋めていくかを今後の課題に挙げました。

  • アイエヌジーバンクエヌ・ヴィ東京支店のレオ・ヴァン・ステイン氏は、欧州と日本のサステナブルファイナンスの相違点について、①気候変動への対応の緊急性に対する認識のレベルが異なっており、欧州では気候変動への対応は緊急で、すぐにアクションを取るべきと認識されていること、②データの計測と開示のニーズについて、欧州では、カーボンフットプリントの軽減について、投資家や顧客がそのデータを強く求めているため、データの開示が必須になっている一方で、日本ではカーボンフットプリントを計測、また、データを開示することはまだ必須化されていないと指摘しました。日本は2050年ネットゼロを宣言し、実現に向けた戦略も策定されたため、脱炭素化の加速を期待すると述べました。

テーマ②企業価値とサステナブルファイナンス

  • 早稲田大学大学院経営管理研究科の入山教授は、日本企業はESGに対して、世界の潮流の外圧を受けて受動的に取り組んでいる状況であり、実際は腹落ちしていないと指摘しました。日本は気候変動に対する危機感が弱いため、対応の必要性に対する認識が低く、また、日本企業の経営者の任期が短いこともあり、長期視点が欠如していると指摘しました。中長期的な企業価値創造は、長期的視点のもとに、未来に向かった社会、環境問題の解決に資する投資やイノベーションを行い、最終的に利益に転換するストーリーであると述べました。

  • 株式会社三菱UFJ銀行の武藤氏は、企業価値向上に向けた銀行の取組みを紹介しました。ICMAがクライメート・トランジション・ファイナンスの考え方を発表し、日本でも政府が中心となってトランジションファイナンスに対する基本方針を立てていることを背景に、金融機関としても、さまざまなステークホルダーに受け入れられる形でのトランジションファイナンスをサポートしていく旨を紹介しました。フィナンシャル・インクルージョンの観点や、エンゲージメントの方針についても紹介しました。
  • 金融庁の池田氏は、中長期的な企業価値の向上には資本コストを意識した経営が重要であると説明しました。そのためには、企業の将来の方向性は財務の数値ではなく非財務情報で語ることが必要であり、金融庁としても、資本コストを意識する経営の促進に取り組んでいることを述べました。サステナビリティ要素の資本コストへの影響を分析するには、IIRCの統合報告フレームワークやSASBのマテリアリティ評価の仕組みが参考になると紹介しました。

テーマ③非財務情報/ESG情報について

  • 株式会社日本政策投資銀行の竹ケ原氏が金融機関・投資家にとっての非財務情報について、ESGインテグレーション、すなわち通常のバリュエーションに非財務情報を統合していく考え方が主流になっていると解説しました。長期投資において不確実性を伴う長期を展望しなければならない場合、財務データで説明できる部分は限られるため、ビジネスモデルの持続可能性が重要であり、ビジネスモデルを長期安定性に影響するファクターとしてのマテリアリティが重視されると説明しました。また、非財務情報の標準化の動向について、開示ルールの統一化・義務化はある意味で必然的であり、現在はその過渡期にあたると述べました。
  • 企業の非財務情報開示について、株式会社日本取引所グループの松尾氏は、①定性的な、戦略に関わる情報開示と②定量的・形式的な情報開示に分類して意見を述べました。①については、個々のビジネスモデル、企業戦略とガバナンスに結びついたマテリアリティの開示が求められること、②については、クオンツ投資家やインデックスを利用するような投資家が求める定量情報ですが、ESGレーティング機関の評価方法にばらつきがある中、可能な限り、なぜこれが問われるのかについて腹落ちすることが課題であると述べました。
  • 早稲田大学大学院経営管理研究科の入山教授は、企業の非財務情報開示は重要である一方、一番重要なのは、情報開示ではなく、自社の将来価値の説明能力の問題、投資家との向き合い方の問題であると指摘し、例えばIRミーティングで徹底的に議論することが重要であると述べました。特にサステナビリティについては30年、40年、あるいは100年先のことを考える必要があるため、CFOや経営陣が真剣に議論していくことが必要であり、日本企業も長期のコミット、未来への投資を行っていく必要があると述べました。

テーマ④脱炭素時代、with/afterコロナ時代、その先

  • 株式会社三菱UFJ銀行の武藤氏は、コロナ時代の変化として、社会あるいはお客さまが抱える課題に対してどうやって対応していくかという点で、改めて視点の転換が必要になったと述べ、MUFGとしての取組を紹介しました。また、具体的な事例として、①リテール向けコロナ対応型サステナビリティボンドの発行、②前事業年度におけるグループ業務純益の0.5%相当額を社会貢献活動(寄付等)に拠出する枠組み構築、③アジアにおけるESGファイナンスの積極的推進、を紹介しました。また、非財務財務内容のインパクト評価は金融機関として取り組むべき課題の一つであるとも述べました。
  • アイエヌジーバンクエヌ・ヴィ東京支店のレオ・ヴァン・ステイン氏は、脱炭素化の次の動向として、生物多様性への対応を挙げました。EUではすでに2030年の生物多様性の戦略を策定しており、この戦略は欧州グリーンディールの重要部分であることを解説しました。また、資源の循環(サーキュラリティ)についての動向を挙げ、欧州ではサーキュラーエコノミーへの取組が積極化しており、資源の使用をリデュース(reduce)、そしてリユース(reuse)とリサイクル(recycle)することが気候変動の対応にも貢献していくと述べました。

クロージング

質疑応答の後、パネリストよりサステナブルファイナンス先進都市東京を目指している東京都に対しての期待などについてコメントを挙げて頂きました。

  • 株式会社日本取引所グループの松尾氏は、国際金融都市の中で出てきている「エコシステムづくり」という点が非常に重要だと思っており、制度的な面は金融庁が主に対応する一方で、制度に現れないエコシステムを東京都がサポートしていくことがサステナブルファイナンスにとって非常に重要、ぜひ協力していきたいと述べました。
  • 株式会社日本政策投資銀行の竹ケ原氏は、河口氏の基調講演の内容を取り上げ、“開国前”のサステナブルファイナンスの歴史を再確認できたとし、今後、この開国後をどう伸ばしていくかの議論を行いたいと述べました。これだけ多くの金融機関が集積していて、これだけ多くの産業界が一同に介して議論ができる場所は東京しかないはずであり、今後、臨場感や現場感がある場を盛り上げていきたいと述べました。
  • 金融庁の池田氏は、国際金融センターを実現していくことが重要であると述べたうえで、日本は個人金融資産を源泉とした金融マーケットの発展だけではなく、やはり、日本企業、あるいはアジアのさまざまな成長企業が資金調達するために内外の資金が流れていくマーケットとしていくために、国内の資産を回していくだけでなくグローバルに資金を集めていくという視点が今後重要になっていくのではないかと指摘しました。その意味で、サステナブルファイナンスは重要な切り口になるため、そこを起点に国際金融都市を目指そうという東京都の取り組みは引き続きサポートしていきたいと述べました。
  • アイエヌジーバンクエヌ・ヴィのレオ・ヴァン・ステイン氏は、東京都には、エコシステムとしてのポテンシャルがあり、今後より強力な国際的な金融ハブになることを期待していると述べました。都市自体がより持続可能なものになり、エコシステムを維持することで、世界からより多くのビジネスが東京に入ってくると提案しました。
  • 早稲田大学大学院経営管理研究科の入山教授は、竹ケ原氏が挙げた現場感について、映像を効果的に使って、世の中で起こっている問題などを可視化して見せていくことが重要と提案しました。二点目として、サステナブルファイナンスに関する議論で、スタートアップに期待していることを述べました。日本でも若者の中で社会・環境問題の解決を目指すスタートアップが増えてきており、スタートアップの視点もぜひ持っていただきたいと提言しました。
  • 最後に株式会社三菱UFJ銀行の武藤氏は、ダボス・アジェンダで都知事が排出量削減について打ち出したことを挙げ、まずは足元、東京都で、CO2を削減していくことによって、グリーンな都市にしていくことを挙げました。また、金融機関として、サステナブルファイナンスをきっかけに東京を盛り上げていきたいと述べました。

Tokyo Sustainable Finance Week(東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク)」は、東京都からの委託を受け、株式会社時事通信社が運営しております。