都民向け金融セミナー基礎からわかる金融の知識とサステナブルファイナンス東京都主催

東京都は、持続可能な都市づくりに貢献するESG投資やサステナブルファイナンスの普及、及び同分野における東京都のプレゼンスの向上等を目的とする「Tokyo Sustainable Finance Week(東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク)」を令和3年10月14日より23日まで実施しました。本ウィーク期間中には、金融リテラシーの向上及びサステナブルファイナンスの認知度向上を目的とした「都民向け金融セミナー」を開催いたしました。

開催概要

  • 日 時2021年10月23日(土)13:00~16:30
  • 主 催東京都政策企画局
  • 対 象投資に興味がある方、これから投資をはじめたいと考えている方など
  • 開催形式オンラインによる配信
  • 定員数制限はありません
  • 参加費無料

都民向け金融セミナー プログラム

時間 項目 セッションタイトル 登壇者
13:00~13:05
(5分)
開会挨拶 開会挨拶 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク 東京都による開会の挨拶 児玉 英一郎
東京都 政策企画局 国際金融都市戦略担当局長
13:05~14:35
(90分)
投資の
基礎知識 投資の基礎知識 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
長期の資産形成
ライフプランの作り方
北野 琴奈
ファイナンシャル・プランナー
(日本FP協会認定CFP®認定者)
投資の基礎知識
金融機関・金融商品の選び方
iDeCoとつみたてNISA
山崎 俊輔
ファイナンシャル・プランナー
フィナンシャル・ウィズダム代表
山崎俊輔氏PDF | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
トークセッション
※各セッション・テーマ毎に質疑応答あり
北野 琴奈
ファイナンシャル・プランナー
(日本FP協会認定CFP®認定者)

山崎 俊輔
ファイナンシャル・プランナー
(日本FP協会認定CFP®認定者)

武藤 十夢
AKB48・気象予報士
ファイナンシャル・プランナー
14:50~16:30
(100分)
サステナブル
ファイナンスの
基本・
投資の実践 サステナブルファイナンスの基本・投資の実践 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
サステナブルファイナンスの基礎知識
ESG投資の視点
橋爪 麻紀子
株式会社日本総合研究所創発戦略センター
シニアマネージャー
橋爪麻紀子氏PDF | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
投資信託・株式の具体的な選び方
サステナブルファイナンスの視点
 
寒竹 明日美
株式会社丸井グループ 町田店店長
(tsumiki証券株式会社 前CEO)
寒竹明日美氏PDF | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク
トークセッション
※各セッション・テーマ毎に質疑応答あり
橋爪 麻紀子
株式会社日本総合研究所創発戦略センター
シニアマネージャー

寒竹 明日美
株式会社丸井グループ 町田店店長
(tsumiki証券株式会社 前CEO)

武藤 十夢
AKB48・気象予報士
ファイナンシャル・プランナー
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スワイプ | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク
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※本セミナーにおいて、事例紹介などのために個別の企業名や商品名があがることもございますが、東京都が特定の金融商品などを推奨するものではございません。予めご了承ください。

講師一覧(ご登壇順)

  • 北野 琴奈 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    北野 琴奈

    ファイナンシャル・プランナー(日本FP協会認定 CFP®認定者)
    ワインエキスパート(日本ソムリエ協会認定)

    1974年北海道生まれ。津田塾大学卒業。実践型FPとして資産運用、不動産投資・賃貸経営、キャリアなどに関する講演、執筆、コンサルティング等を行う。TBS「かっちりマンデー!!」、「がっちりアカデミー!!」、BS11デジタル「不動産王」、BSジャパン「日経プラス10」、日経CNBC「不動産投資AtoZ」等にコメンテーターとして出演。その他メディア出演・取材協力多数。

  • 山崎 俊輔 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    山崎 俊輔

    フィナンシャル・ウィズダム代表 AFP認定者(ファイナンシャル・プランナー)
    消費生活アドバイザー

    確定拠出年金を中心とした企業年金制度と投資教育が専門。2017年2月からは、厚生労働省の確定拠出年金の運用に関する専門委員会で委員を務める。楽しく分かりやすいお金のコラムが人気で、Yahoo!ニュース、日本経済新聞電子版、プレジデントオンラインなど、連載12本を抱える人気FPのひとり。主な著書に『共働き夫婦 お金の教科書』(プレジデント社)、『普通の会社員でもできる 日本版FIRE超入門』(ディスカヴァー・トゥエンティワン社)など。

  • 橋爪 麻紀子 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    橋爪 麻紀子

    株式会社日本総合研究所創発戦略センター シニアマネージャー

    NTTデータ、国際協力機構を経て、2012年に日本総合研究所に入社。機関投資家向けに企業のESG側面の調査を実施する傍ら、ESG関連の金融商品の設計・運用に従事。近年では、社会的インパクト創出に資する地域ビジネスやサステナビリティ分野の人材育成事業に注力。書籍『「わたし」のための金融リテラシー』『行職員のための 地域金融×SDGs入門』『ビジネスパーソンのためのSDGsの教科書』『投資家と企業のためのESG読本』(いずれも共著)他。

  • 寒竹 明日美 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    寒竹 明日美

    株式会社丸井グループ 町田店店長(tsumiki証券株式会社 前CEO)

    1997年株式会社丸井(現丸井グループ)入社、下着の販売に始まり財務・経営企画・IR・店舗運営など多様な職種に従事したのち、2018年日本初のクレジットカードを使った初心者向け資産形成サービスtsumiki証券(株)を立ち上げる。2021年10月より現職。経済誌Forbes主催の『Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2018』において、女性が少なかった分野で、先駆者として最前線で活躍している女性を表彰する「個人部門・先駆者賞」を受賞。

  • 武藤 十夢 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

    武藤 十夢

    気象予報士 ファイナンシャル・プランナー
    女性アイドルグループ AKB48 teamKメンバー

    1994年東京都出身。成城大学卒業、成城大学大学院修了。2021年6月にファイナンシャル・プランニング技能士二級の資格を取得。気象予報士の資格も保有し、ABEMAニュース番組「ABEMA Morning」において“現役アイドル”お天気キャスターとしても活躍中。

都民向け金融セミナー開催報告

東京都による開会の挨拶 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

東京都 政策企画局 国際金融都市戦略担当局長 児玉 英一郎

  • 日本の個人金融資産は約1,900兆円とアメリカ、中国に次いで多いが、その約半分は現預金で、株式などへの投資は約1割にとどまっており、これは現預金が1割程度で、株式などへの投資が約半分のアメリカとは対照的であると指摘。日本では長く低金利が続いており、預貯金だけでは資産が増えない状況にあるため、今後はお金を元手にしてお金を増やすという資産運用が大切になってくると述べました。また、東京都では「国際金融都市・東京」構想の改訂を進めており、その大きな柱の1つが本日のテーマである「サステナブルファイナンスの推進」であると言及。脱炭素化の推進には膨大な資金が必要であり、預貯金から投資への流れを生み出すことは私たち一人ひとりの資産形成はもとより、コロナ禍の先の日本の持続的成長という面においても重要であると語りました。

投資の基礎知識 講演① 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

ファイナンシャル・プランナー(日本FP協会認定CFP®認定者) 北野 琴奈 氏

ライフ・マネープランを考えよう!

  • 北野氏は、あくまでも一例であり単純化したものとしたうえで、2人の子どもがいる夫婦を例にとり、リタイア前の収支概算について説明。一方の手取り年収が470万円で30年勤務、もう一方は240万円で出産・子育てなどを考慮して20年勤務とした場合の収入は1億8,900万円、逆に費用は①住居費と教育費を除いた生活費が月24万円×30年で8,640万円、②居住費(マイホーム購入費:頭金、ローン返済、保有中のランニングコスト含む)が7,000万円、③教育費が800万円×2人で1,600万円とすると1億7,240万円で、1,600万円ほどが手元に残る計算であると語りました。

  • 一方、これもあくまで参考としたうえで、60歳で退職して90歳で生涯を終えると仮定した場合のリタイア後の収支概算も紹介。総務省の家計調査によると高齢無職夫婦世帯の生活費の平均は月27万円ほどで、厚生年金の受給平均額が夫婦2人で現在月22万円と考えると、60歳から90歳までの30年間の生活費として3,000万くらいは自分で用意しておくとよいのではないかと解説しました。
  • 最後に、リタイア前には1,600万円ほどが手元に残る計算だが、リタイア後の生活費としては3,000万円程度が必要となり、多くの人は退職金を活用してその差を埋めると考えられると述べたうえで、いずれにしてもリタイア後に必要な資金をいかに確保するかが課題となるとまとめました。

長期の資産形成

  • 北野氏はまず長期の資産形成の1つの鍵は、早期からの資産運用であると言及。一例として、リタイアまで20年間あり、毎月3万円貯蓄した場合に得られる金額は720万円だが、利回り2%で運用した場合は884万円(複利・税引前)とかなり変わってくるとの試算を紹介し、1万円でもよいのでなるべく早く資産運用を始めることが大切であると述べました。
  • 次に、1981年から2021年の日経平均株価の推移を示しながら、バブル期やその崩壊、リーマンショックなどその時々により株価には上昇・下落の波があるため、資産運用には時間を分散させることが重要と解説。例えば、一気に100万円を投資するのではなく、少額でもよいので20年、30年と継続的に投資していくことがゆくゆくはプラスになる可能性が高まる、と語りました。
  • また、資産運用の際にもう1つ大切なのは、投資対象の種類の分散であるとしたうえで、投資対象は国内債券、外国債券、国内株式、外国株式の4つが基本とし、債券は価格の揺れ幅が比較的小さく、株式は振れ幅が大きいとそれぞれの特徴を紹介。私たちの公的年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)では現在、この4つに25%ずつ均等に投資をしていると述べ、そうした事例も参考にしながら投資対象の種類の分散にも心がけてほしいと締めくくりました。

投資の基礎知識 講演② 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

ファイナンシャル・プランナー フィナンシャル・ウィズダム代表 山崎 俊輔 氏

投資の基礎知識

  • 投資というとまだまだマイナスのイメージを持っている人が多いが、投資とは直近では使わないお金で債券や株式を購入することで国や地方自治体、企業などにお金を回し、企業はそのお金で新製品を開発したり、国や地方自治体はインフラを整備したりとより豊かな社会づくりを進めていくわけであり、そうした意味では投資とは社会のためになることだと述べました。
  • 同時に、投資は私たちの資産形成の大きな力になるとし、その際のポイントとしては「長期投資」「積立投資」「分散投資」の3つをあげました。例えば、毎日カフェラテ1杯分くらいの小さな資金(約370円)であっても、40年間積み立て続け、もしも長期投資の利回りが年5%であったら1,700万以上の資産が形成できるとし、リスクを考慮しつつも世界中に幅広く投資してみる方法がお勧めであると述べました。

「iDeCo」と「つみたてNISA」

  • 次に、資産運用をする際は税制優遇があるお得な口座を活用してほしいとしたうえで、個人型確定拠出年金(iDeCo)と少額投資非課税制度(NISA)の概要を説明。iDeCoは自分の老後のために自分で積み立てをする年金という位置づけで税制優遇が大きいのが魅力であるとし、優遇として①掛金が全額所得控除されるため所得税と住民税が軽減できる、②金融商品の運用益には通常税金がかかるがiDeCoの運用益は非課税、③iDeCoの老齢給付金や年金給付を受け取る際にも税制優遇適用という3つをあげ、ただし年金なので原則60歳までは引き出せないという制約があると述べました。
  • 一方のNISAは、純粋に運用益が非課税になるというもので、普通の証券口座で投資をするよりもNISA口座で投資をしたほうがお得になると解説。NISAは現在2種類があり、「一般NISA」は非課税投資枠120万円/年で最長5年間、もう1つの「つみたてNISA」は非課税投資枠40万円/年で最長20年間、非課税で投資ができると説明したうえで、これから投資を始めてみようという人には「つみたてNISA」がお勧めと語りました。

金融機関・金融商品の選び方

  • iDeCoやNISAは国の制度なのでどの金融機関で始めても同じと思いがちだが、金融機関ごとに取り扱っている投資信託のラインナップや手数料体系などが異なっているため、iDeCoやNISAの口座を開設する際はまず金融機関を選ぶことが大切であるとしたうえで、その際はNPOが開設している比較検索サイトを活用したり、実際に各金融機関のホームページをチェックしたりして、最初のパートナー選びをじっくり考えてほしいと述べました。
  • iDeCoやNISAの口座を開設する際は、本人確認はもちろん、NISAはマイナンバー、iDeCoは基礎年金番号が必要となるなど開設書類の手続きが生じるが、基本的には1回のやり取りでスムーズに完了すると解説し、投資はハードルが高いと思われがちだが、iDeCoやNISAをうまく活用して一歩を踏み出して、自分の資産が増えるサイクルを動かし始めてほしいと結びました。

投資の基礎知識 トークセッション 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

テーマ① 40代以降からの投資への向き合い方は

  • トークセッションでは、講演を行った北野氏と山崎氏に加え、各講演後にコメントや質問を述べて北野氏や山崎氏と活発な議論を交わした武藤十夢氏(AKB48、気象予報士、ファイナンシャル・プランナー)が聴講者の皆さんからの質問に答えました。
  • 山崎氏は、長期投資の話をすると若い人向けと思われがちだが、40代・50代になっても基本的な考え方は同じと述べました。一方、ある程度資産形成ができ、守るべきものがある年代なので投資に回すお金と定期預金として残しておくお金のバランスは意識してほしいと語りました。また、投資と向き合ってほしいのはシニア世代も同様であり、人生100年時代といわれる今、無理のない資産運用で自分のお金を長生きさせるという観点はますます重要になってくると述べました。

テーマ② 投資を行う際に押さえておきたい知識とは

  • 北野氏は、投資に一歩踏み出すとリスクを忘れてリターンばかりを追ってしまう人が多くみられ、結果的にハイリスクな商品や怪しげな投資話に乗ってしまうケースもあると指摘。そのうえで、どんな金融商品にも必ずリスクがあることを認識しておく、そして最悪の場合はどうなるのかを押さえておくことが投資を行う際の最低限の知識だと語りました。

テーマ③ 初心者が怖がらずに投資を始めるには

  • 武藤氏は、確かに自分のお金が減ったりするのは怖いと感じると思うが、例えば1,000円などの小額から始めれば10%下がっても100円の減少なので、そのぐらいの金額ならば勉強料と考えて怖さも軽減されるのではないかと語りました。また、自分自身のお金が関わることで自ずと資産運用についての勉強もするようになり、そのように知識を少しずつ増やしていくことで怖さや失敗も少なくなっていくのではないかと述べました。

サステナブルファイナンスの基本・投資の実践 講演③ 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

株式会社日本総合研究所創発戦略センター シニアマネージャー 橋爪 麻紀子 氏

サステナブル・ファイナンスの基礎知識

  • 橋爪氏は、サステナブルファイナンスとは、地球環境の保護や人権問題の解決などを推し進め、持続可能な社会に転換するための金融のあり方であると解説。持続可能な開発目標(SDGs)やパリ協定によって世界が環境問題や社会課題に目を向け始めたことを背景に、クリーンエネルギー事業への投資や、労働環境の改善に積極的に取り組む企業への融資といった、環境や社会をよりよくするための金融が求められる時代になってきたと述べました。また、新型コロナウイルスの感染拡大によって生じた世界的な経済活動の停滞も働き方の変革や環境汚染の一時的な回復などをもたらし、従来の企業活動を見直すきっかけになったと指摘しました。

  • サステナブルファイナンスには、投資・融資・債券といった伝統的な資金調達からクラウドファンディングやインパクト投資といった新しい金融手法が含まれ、多角的に環境問題や社会課題の解決とつながっていると説明。サステナブルファイナンスは、これらの問題や課題の解決策となる新たな製品やサービスを生み出し、市場を活性化させる源泉としての効果が期待されるとともに、環境汚染やジェンダー格差など、これからの企業の成長を阻害しかねない従来の商習慣を改めるきっかけとしても注目されていると語りました。

ESGの視点で考える

  • ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の視点から投資先を決める投資方法であり、これらの視点から商品やサービスを選ぶ消費者や、投資先企業を選ぶ投資家の増加を受け、企業もESGへの配慮を考えるようになっていると言及。企業や社会のあり方は、投資家による株の売買や消費者による不買運動、4R(Reduce、Reuse、Recycle、Refuse)運動、シェアリングなどの意思表示の影響を受けて変化するものだと述べました。
  • そうした消費者の意思が反映された顕著な例として、児童労働や強制労働を背景に不買運動が起きたチョコレートやアパレルの事例を提示。消費者からの反対の声を受けて、労働者を守る認証制度ができたり、仕入先への配慮を行う企業が続出したりしたことなどを解説しながら、個人の投資や消費行動が企業や社会に与える影響の大きさを示しました。
  • 一方、SDGsやESGの意識の高まりとともに増えてきたグリーンウォッシング、SDGsウォッシングに対しては注意を喚起し、ホームページに貼られたSDGsのロゴや、環境保護を想起させるパッケージなど、見せかけだけの対応ですまそうとする企業に流されることなく、実際の取組や過去の実績から注意深く判断して投資や消費行動につなげてほしいと語りました。

サステナブルファイナンスの基本・投資の実践 講演④ 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

株式会社丸井グループ 町田店店長(tsumiki証券株式会社 前CEO) 寒竹 明日美 氏

はじめてさん向け! 投資信託の選び方

  • 寒竹氏は投資信託とはお客様に代わってプロが国内外の株式や債券などの金融商品に投資するサービスであると説明したうえで、100円という少額からでも投資を始められる、金融商品を組み合わせて分散投資することでリスクを軽減できるなどのメリットをあげ、投資信託は初心者の方にとって心理的ハードルが低い金融商品であると解説しました。

  • 次に、初心者が投資信託を始める際にお勧めの3ステップを紹介。日本で販売されている投資信託の数は約6,000本と膨大であるため、まず①金融庁が定めた基準を満たす「つみたてNISA」の対象商品に絞ることでリスクの分散や運用の安定性を確保し、次に②投資する地域や運用方法、コストなどを比べて自分の価値観に合ったものを選び、最後に③運用の情報を分かりやすく発信してくれる運用会社で購入することを推奨しました。
  • 続いて、投資信託を購入する際に必ず参照してほしい交付目論見書の見方について解説しました。交付目論見書で確認するポイントとしては、①その投資信託が目指す目的や投資先などの特徴、②投資で生じるリスク、③運用期間や純資産額の推移といったこれまでの実績、④手続きの方法や手数料の額の4つをあげ、きちんと理解・納得して購入することが大切だと述べました。

投資にもサステナブルな視点を!

  • 従来、企業を判断する基準は財務情報が中心だったが、近年では環境問題や社会課題に関する取組などを記した非財務情報も重要な判断基準となってきているとし、2020年には約600社の日本企業が財務情報と非財務情報を合わせた統合報告書を開示するなど、情報開示に積極的な企業が増えてきていると述べました。一方で、ESGに配慮していることを装っているだけの「名ばかりESG投資信託」が増えてきているとも指摘し、企業のホームページや交付目論見書を注意深く確認することで騙されないようにしてほしいと語りました。
  • 情報開示が進んでいる背景には、次世代を担う若者たちの環境や社会に対する問題意識の高さもあると分析し、若い世代は特に利益だけを追求するような商品やサービスに対する警戒心が高い傾向にあることから、ESGに配慮しない企業活動を続けていくことや、情報を不透明にしておくことは今後一層大きなリスクになっていくだろうと予見しました。
  • 最後に、ESGの視点を取り入れながら、企業は成長を続けることができるのかという疑問に対して、寒竹氏は丸井グループの株価の推移を例にあげ、中長期的な視点から見るとESGに対する取組は企業価値と連動していると解説。すべての企業に当てはまるわけではないとしながらも、ESGに配慮した取組と企業の成長のつながりを示しました。

サステナブルファイナンスの基本・投資の実践 トークセッション 講演 | 東京・サステナブル・ファイナンスウィーク

テーマ①企業の環境問題に対する配慮の度合いを測るには

  • トークセッションでは、講演を行った橋爪氏や寒竹氏に加え、前半のプログラム[投資の基礎知識]から引き続いて登壇した武藤十夢氏が聴講者の皆さんからの質問に答えました。
  • 寒竹氏は、企業が環境に与える負荷は業種や業態ごとに異なるうえ、配慮の度合いを測る基準がいくつもあるため、一概に判断することは難しいとしながらも、年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用している基準が1つの尺度になると提示。GPIFが投資先を選定する際に採用している複数のESG指数の中から環境についての指数を見れば、その企業がどのくらい真摯に環境問題に対して取り組んでいるのかを判断する手がかりになると述べました。

テーマ②グリーンウォッシングや「名ばかりESG投資」を見極めるコツは

  • 橋爪氏は、企業のイメージや商品パッケージの見た目だけで判断せず、信頼できる情報元から事実を確認する心がけが大切だと語りました。昨今では多くの企業がホームページや統合報告書などで情報を開示しているのでデータや数字などから客観的に判断してほしいと述べ、関連するデータや実績が見つからない場合には判断を保留にするなど慎重に対応してほしいと強調しました。

テーマ③ESGの視点で投資する人を増やすには

  • 武藤氏は、環境や社会の問題を自分事として捉えることがESG投資を考える第一歩になるという見方を示しました。どうなるか分からない未来のことは実感が湧かないかもしれないが、自分のライフプランに照らし合わせて考えれば、守っていくべき自然や目指すべき社会のあり方が見えてくるはずだと語り、思い描いた未来を実現させる手段として、また自身の資産形成という観点からもぜひ積極的に投資について考えてほしいと結びました。

東京都 政策企画局 戦略事業部 戦略事業課