特集記事

「東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク」に向けて、サステナブルファイナンスに関する特集記事の連載をスタートします。
第1回、第2回は、サステナブルファイナンスとは?をテーマに、サステナブルファイナンスに関する基礎情報をお届けします。

第1回

サステナブルファイナンスとは(上)

持続可能な社会を実現するための金融である「サステナブルファイナンス」が急速に拡大しています。サステナブルファイナンスは、気候変動などの環境課題や、人権問題や貧困などの社会課題といったグローバル課題に対応し、社会をより持続可能な形に転換していくために、資金を活用するものです。2030年までに国連の持続可能な開発目標(SDGs)を達成するには、現在の投資の流れを倍にし、毎年5兆~7兆USドルの資金が必要と言われており(i) 、持続可能な社会の実現のためには金融は重要な役割を果たすと言われています。

サステナブルファイナンスにはさまざまな定義がありますが、ISOのサステナブルファイナンスに関する技術委員会(ISO/TC 322)では、「環境・社会・ガバナンスといったサステナビリティ要素を経済活動への資金提供に統合すること」と説明しています。したがって、サステナブルファイナンスは幅広い資金提供の方法を含む概念であり、昨今国内でも急速に認知度の高まったESG投資のみならず、サステナブルな融資や債権、その他さまざまな、幅広い金融サービスを包含しています。

サステナブルファイナンスの種類 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

なぜ、今、サステナブルファイナンスが注目されているのでしょうか。サステナブルファイナンスに関係するデータを見れば、その急速な発展は明らかです。 世界のESG投資の残高は、2016年から2018年に34%増加し (ii)、グリーンボンドの発行額は同じく2016年から2018年にほぼ倍増しました (iii)。インパクト投資の残高は、同時期に約4倍に増加しています(iv) 。

また、サステナブルファイナンスを推進する国際イニシアチブも拡大しています。2006年に公表された国連の「責任投資原則(PRI)」の署名機関は過去数年で急増し3,000社を超え、昨年PRIの銀行版として発足した「責任銀行原則(PRB)」の署名機関も180社を超えました。金融安定理事会(FSB)により設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」が2017年に公表した最終報告書の提言には、約3年間で1,000を超える企業・機関が賛同しています。

この世界規模での大きな変化の流れを作ったのが、SDGsや、世界の気温上昇を1.5~2℃に抑えるという世界共通の目標を掲げるパリ協定です。2015年以降、持続可能な社会の実現に向けて世界が共通の目標に向かって動き出し、それに呼応するように、金融セクターにおいても、サステナビリティに関する要素を事業活動に統合する流れが加速してきました。

日本国内では、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年にPRIに署名したことで、ESG投資への注目が一気に高まりました。

歴史 | 東京・サステナブル・ファイナンス・ウィーク

次回は、サステナブルファイナンスに関する具体的な手法をご紹介します。

【出典】

  • (i)UN Global Compact “UN Alliance for SDG Finance” ほか
  • (ii)Japan Sustainable Investment Forum (2018), 「サステナブル投資残高調査」
  • (iii)Climate Bonds Initiative (2019), ”Green bonds: The state of the market 2018”
  • (iv)GIIN(2017) (2019), Annual Impact Investor Survey

執筆:PwCあらた有限責任監査法人

東京都 政策企画局 戦略事業部 戦略事業課